症例紹介Cases
右側下顎臼歯部の破折ファイル(治療に使用する金属器具)に対して、歯科用CTにて診断、マイクロスコープを併用して除去したケース
右側の治療途中の歯が中々治らないので、一度他の歯科医院で診てもらおうと思われ来院されました。通常のデンタルレントゲン写真診断だけでは診断が難しいので、歯科用CTを利用して治療を進めていきました。
初診時デンタルレントゲン(46:右側下顎第一大臼歯)
このレントゲン写真では、治療途中の薬と思われる像の他に、治療用器具の破折残置を疑う像(赤矢印)が認められましたが、根の先の方には病変を疑う像は認めませんでした。
歯科用CTによる画像診断
問題のある部位(赤矢印)が、頬側近心根に存在している事(場所)が特定できました。
除去された破折ファイル(治療用器具の一部)
3mmから4mm程度の破折片を摘出できました。
デンタルレントゲン写真(破折ファイル除去確認)(46:右側下顎第一大臼歯)
根管内に写りこんでいた白い不透過像(金属像)は消え、きちんと破折ファイルが取れた事が確認できました。
補綴(白い歯を被せた治療)後のデンタルレントゲン像
根管内は専用の薬で緊密に充填されている事が確認できました。
補綴(白い歯を被せた治療)後1年経過のデンタルレントゲン像
補綴後と比較しても画像の変化なく、良好に経過している事が確認できました。
幸いなことに、現在は問題なく使用されているとのことでした。
治療を終えて…
この患者様は、同部位の歯の神経の治療を受けてもずっと痛みが取れないので、当院を受診されました。痛みの原因と破折ファイルの直接的因果関係は分かりませんが、本来あってはならない物が根管内に残置されており、除去を試みることによりかえって歯根破折、尖孔などにより抜歯となるリスクも存在するため、破折ファイルの先に透過像があり、他の根管の治療や他の原因を取り除いても症状が消失しない場合などは、抜歯のリスクを同意の上で破折ファイルの除去を行うこともあります。破折ファイルが存在していても、上記の理由により患者様と相談の結果、できる限り消毒してそのままとすることもあります。歯の神経の治療は、抜歯の(歯を抜く)一歩手前の治療となります。できる限り最善の方法、材料で対応することにより、そのリスクを下げる事ができると思います。
注)治療例は、患者様同意の下、同じような状態の悩みを抱えておられる患者様の治療内容に対する理解を深めていただくための参考症例とさせて頂いています。治療例は結果を保証する物ではございませんので、予めご了承ください。